出発まであと少し。
直前になって、今回は精神論です。
中国に旅立つ方々に、
身に付けていただきたい心構えが3つあります。
これは日中間で生きる私からの、みなさんへのお願いです。
まず第一に、
日本人を代表するんだという自覚を持って下さい。
ここ数年、日本に旅行で来る中国人が増えてきました。
それにともなって、
電車など公共の場所で大声で話す中国人も目立ってきました。
彼らを見て多くの日本人はこう感じています。
「中国人ってマナー悪いなぁ」
大声で話しているのは王さんや張さんであって、
上海で暮らしている陳さんはマナーが良いかもしれません。
でも、日本人は誰一人として、
王さんや張さんの個人的な問題とは見ません。
王さんや張さんを見て「中国人は」と判断します。
みなさんが中国に行くと、
これとまったく同じ状況になります。
日本の大学で山田さんがいつも遅刻する。
「山田さんは遅刻が多いなぁ」と判断されます。
でも、中国の大学で山田さんが遅刻すると、
「日本人って遅刻が多いなぁ」と見なされるんです。
あなた一人の問題では済まないんです。
あなた一人の行動が、
日本人に対する評価を決めるんです。
日本にいる日本人が、
王さんや張さんを見て、
「中国人はマナーが悪い」と判断するように、
中国にいる中国人は、
たった一人の山田さんを見て、
「日本人は遅刻が多い」と判断するんです。
国を出た瞬間、あなたは日本人の代表です。
あなたの行動が日本人の評価につながります。
良い行動を取れば、日本人は良いと評価されます。
悪い行動を取れば、日本人は悪いと評価されます。
国を出るということは、日本人であることを背負うということです。
パスポートを持つ重みを決して忘れないで下さい。
第二に、
日本の価値基準を捨てて下さい。
中国に着くと、
初日から不愉快なことが山のように襲いかかってきます。
空港に出迎えに来た人が遅れてきた。
バスに乗ったら携帯で大声で話している人ばかり。
誰もバス停で並ばない。
入学手続きがやたら効率が悪い。
食べ方が汚い。
道はゴミだらけ。
あっちこっちでツバを吐いてる。
けどね、
彼らはそれで機嫌よく暮らしてるんです。
そのように行動するには理由があるんです。
そこは日本じゃなくて中国なんです。
遅れるという時間の基準が違うんです。
日本ではジャストタイムじゃないと遅れです。
でも、中国では5分10分は遅れたうちに入りません。
だからこそ、多少の遅れは気にせず、
ストレス無しで彼らは生きているんです。
なんでバス停で並ばないのか。
バスをよく見てたら分かります。
停まる場所がいつも違うんです。
並んでても、そこにバスが停まるとは限らない。
だから並んでも意味ないんです。
確かに北京などでは停まる場所が一定してきました。
でもそれってここ3年ほどのことです。
長年の習慣がそう簡単に変わるわけではありません。
いまだ停まる場所が一定しない上海で、
誰も並ばないのは当たり前のことです。
必ず同じ場所にバスが停まる。
そんな日本での常識を持ち込むほうがナンセンスなんです。
道がゴミだらけ。
あちこちでツバを吐く。
そうです。
その通りです。
それはつまり、
どこでも好きなときにゴミを捨てられる。
ツバを吐きたい時にツバを吐ける。
気にしないで好きなようにできるから便利なんです。
それって変だと思うでしょ。
でも、まったく変ではありません。
40年ほど前の日本もそうでした。
そんな日本で徐々に不衛生じゃない?って感覚が芽生え、
数十年かけて今の日本になったんです。
中国でもようやく問題視されるようになってきました。
でも、ようやく問題になってきたばかりです。
日本の40年前がそうであったように、
いきなりきれいにはなりません。
これからみなさんが向かう先は日本ではありません。
日本とは別の文化、習慣、習俗がある別の国です。
そこで日本の価値基準を持ち出さないで下さい。
むしろ彼らの価値基準に寄り添ってみてください。
いきなりは無理かもしれません。
でも少しずつで良いので、彼らの基準を受け入れていって下さい。
そうすることで、中国で心地良く暮らせるようになり、
同時に、より深く中国を理解できるようになります。
私達がそばをズルズル音を立てながら食べてて、
それを見たフランス人がしかめっ面をしたら不愉快でしょ。
嫌ならとっととフランスに帰れよ、って言いたくなるじゃないですか。
中国人だって同じです。
同時に、しかめっ面をしているフランス人、
かわいそうだなぁ、って思いませんか。
そばはズルズル言わせながら食べたほうが絶対美味しいのに。笑
日本の価値基準は日本に置いていって下さい。
中国の価値基準を受け入れて下さい。
最後に、
中国で暮らさせてもらっている感謝の気持ちを常に持って下さい。
みなさんはこれから1学期なり1年なりの間、
所得税も住民税も払わず中国で暮らしていきます。
降り立った空港、空港から市内への道、
大学の建物、留学生寮で使う水道、電気、
すべて中国の税金で作られたものです。
日本のODAがどうだこうだという人がいますが、
それは空港から道路から校舎から上下水道まで、
すべてODAで作ってから言って下さい。
税金を一銭も払ってないのに、
水道も電気も使えるんです。
国民としての義務は一つも背負わないのに、
警察が治安を守ってくれるんです。
北京も上海も地下鉄は赤字です。
その赤字を補填しているのは、中国人が払った税金です。
我々は一銭も補填しないのに、地下鉄に乗るんです。
学費と寮費以外はほとんど負担しない。
なのに、大きな不自由もなく、安全を保証されて、
これから1学期なり1年なり中国で暮らさせてもらうんです。
文句を言ったらバチが当たります。
常に感謝の気持ちを持って下さい。
感謝の気持ちを持つ相手は中国だけではありません。
もう一つ、感謝の気持ちを持って欲しい相手がいます。
それは、我々の先人、前世代の日本人に対してです。
60数年前に日本は戦争に負けました。
日本軍は中国大陸から敗戦国の兵士として引き上げてきました。
歴史認識の問題は別として、
当時の中国人にとって日本人は憎むべき敵国人でした。
これは否定のしようがない事実です。
それから60数年が経ち、未だに反日感情が残っているのは事実です。
しかしそれと同時に、
日本国と日本人が中国人から敬意を持たれているのも事実です。
日本人はウソをつかない。
日本人は信頼を裏切らない。
日本人は素養が高い。
日本人は規律を守る。
日本人は誠実である。
これらは中国で広く認められている日本人に対する評価です。
彼らにとっては侵略国の国民だったんです。
敵国の国民だったんです。
終戦当時の子供たちは、年は取りましたがまだたくさん生きています。
親を殺された人もいるでしょう。
家を焼かれた人もいるでしょう。
親族がみんな死んでしまった人もいるでしょう。
そんなお年寄りも含めて、
戦争当時の日本人に対する恨みは今でも心に持ったまま、
それでもなお、日本人を高く評価しているのです。
それはなぜか?
我々の先人たちが懸命に頑張ってきたからです。
終戦直後、まだ反日感情だけしかない当時から、
先人たちが貿易などで中国に乗り込みました。
相当大変な思いをされたろうと思います。
そこからコツコツと誠実に商いをし、良い製品を作り、
そういった日々の営みを地道に積み重ね、
中国における日本人の信頼を築きあげてくれたんです。
だからこそ、我々今の日本人は、
彼らにとっては侵略国の子孫であるにもかかわらず、
ばかにされることもなく、傷つけられることもなく、
この国で尊重されて安全に暮らしていくことができているのです。
日本人はビザ無しで中国に15日間滞在できます。
このことは、みなさんの多くがご存知だろうと思います。
では、ビザ無しで中国に15日間滞在できる国民。
日本人以外に何カ国あるかご存知ですか?
実は、日本とシンガポールとブルネイ。
3カ国だけなんです。
ビザ無しで中国に15日間滞在できるのは、
世界250カ国の中で日本など3カ国の国民だけなんです。
アメリカ人もイギリス人もフランス人も、
韓国人も北朝鮮人もモンゴル人もベトナム人も、
たった1日であっても中国に入るにはビザが必要です。
なのに日本人は必要ないんです。
日本は中国から特別扱いを受けている、
世界でたった3カ国だけの特別な国の1つなんです。
かつての敗戦国が、
かつて中国にとって侵略国であった日本が、
3カ国だけの特別な扱いを受けているんです。
敗戦から60余年を経て、日本人は中国で信頼を勝ち得ました。
でもそれは、決して我々今の日本人が素晴らしいからではありません。
我々の先人たちが、この中国の大地で地道に信頼を築きあげてくれた。
そのおかげで、我々今の日本人は、
かつての戦地で安全に留学することができる。
そのことについて、
我々の先人たちに対して、
決して感謝の気持ちを忘れないで欲しい。
そして、先人たちが築きあげてくれたものを、
決して我々の世代が壊すことがあってはならない。
これから中国に渡るみなさんに、
ぜひ、強く深い気持ちを持っていただきたいと願います。
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【今週のまとめ】
1) 日本人を代表するんだという自覚を持って下さい
2) 日本の価値基準を捨てて下さい
3) 中国で暮らさせてもらっている感謝の気持ちを常に持って下さい
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